ここ最近、当院に来られている患者さんのお知り合いの方などが「転んで入院している」「骨折したらしい」という話をよく耳にします。
高齢者の方は、若年者と違って何故こんなにも転びやすく、骨折しやすいのでしょうか?
高齢の方が転びやすい原因
●筋力の低下
年齢を重ねると、どうしても筋肉が減り、筋力も落ちます。特に膝を上げる筋力やつま先を上げる筋力が落ちていると転びやすくなってきます。
●バランスが取りづらくなる
加齢により平衡感覚がなくなってきます。
それによってバランスをくずして転びやすくなります。
●視力の低下視力が低下
足元が見づらくなるため、段差や足元にある障害物に気づかず転んでしまうことがあります。
●認知力の低下
認知症の問題はさまざまですが、たとえば、注意力の低下があれば、そのへんのものにつまづきやすくなりますし、記憶力の低下があれば、同じところで何度も転んでしまいます。
骨折をしやすい原因
・骨に脆弱性がある
高齢者には骨粗鬆症などの基礎疾患を有している場合が多く、軽微な転倒などでも容易に骨折に至ります。
特に閉経後の女性はホルモンの関係から骨が脆弱化しやすいので注意が必要です。
・骨折の治癒が遅い
子どもの骨折とは異なり、高齢者の骨折では自家矯正力が乏しいので
一度骨折してしまうとなかなか治らず、治療が遷延し、認知症などの症状を悪化させることもあります
・骨折を起こしやすい部位がある
高齢者の骨折には4つの好発部位が存在します
それは、、、
・大腿骨頸部骨折
・上腕骨外科頸骨折
・脊椎圧迫骨折
・橈骨遠位端骨折
です
大腿骨頸部骨折
高齢者に発生する場所で頻度の高いもので容易に発生し、股関節周囲の痛みのために歩行か難しくなります
骨折部位により頸部骨折「内側骨折」と「外側骨折」に分けられます
大腿骨は股関節からすぐのところ(大腿骨頸部)で曲がっています。人間はその曲がった大腿骨で体を支えていまふが、曲がったところは転倒や転落時に外力が集中しやすく、骨折しやすいのです
この骨折は骨粗鬆症で骨が脆くなった高齢者に多発することで有名です
年間10万人が受傷し、多くの方がこの骨折をきっかけに寝たきりや閉じこもりになってしまいました
医学的には病態が大きく異なりますので
関節の中で折れる場合(大腿骨頸部内側骨折)
と関節の外で折れる場合(大腿骨頸部外側骨折)
に分けて考えます。
・内側骨折は骨粗鬆症がある場合。ちょっと脚を捻ったくらいでも発生することがあります。
よくあるのは「高齢者が何日か前から足の付け根を痛がっていたが、ある時急に立てなくなった」というエピソードです。
おそらく立てなくなった時、骨折部でズレが生じたのでしょう。
・外側骨折
内側骨折と違い、明らかな転倒・転落で発生します。
・両者の違い
内側骨折:血液循環が悪いため骨癒合が得られにくいが、関節内での骨折のため周りにスペースがなく内出血が少ない
外側骨折:骨癒合は得やすいが受傷時の外力が大きく、内出血もするため全身状態に影響出やすい
上腕骨外科頸骨折
上腕骨頭と大・小結節を結ぶ線との間の部分を外科頸といい、この部分が骨折することをいいます
上腕骨よ近位部(中枢側)に起こる骨折のなかで、この外科頸部が最も多く骨折しやすくなります。
転倒して手や肘をつくときに起こり、骨折してしまうと近くを走る大血管や神経が骨片(折れた骨の欠片)によって損傷してしまうこともあります
脊椎圧迫骨折
骨粗鬆症になると、尻もちはもちろん、くしゃみや不用意に重いものを持ち上げたりといった、ちょっとしたきっかけで椎体が潰れることがあり、いつの間にか骨折していることもあります
圧迫骨折のときは痛みを感じない人もいますが、激痛が起こる人もいます。
脊椎圧迫骨折の症状は以下の通りです。
(1)鈍い痛みが断続的に続く
(2)起き上がる・立ち上がるときに痛む
(3)長時間座っていると痛む
(4)背骨を軽く叩くと不快な感じがする
(5)脚に痛みが走る
(6)脚に力が入りにくい
(7)寝返りをうつと痛む
(8)仰向けに寝られない
脊椎圧迫骨折を長期間放置しておくと、背中ぎ丸くなる円背が起こったり、身長が縮んだりします
橈骨遠位端部骨折
手のひらをついて転んだり、自転車やバイクに乗っていて転んだりしたときに、前腕の2本の骨のうちの橈骨(とうこつ)が手首のところで折れる骨折です。特に閉経後の中年以降の女性では骨粗鬆症で骨が脆くなっているので、簡単に折れます。
若い人でも高いところから転落して手をついたときや、交通事故などで強い外力が加わると起きます。子どもでは橈骨の手首側の成長軟骨板のところで骨折が起きます。
いずれの場合も、前腕のもう1本である尺骨の先端やその手前の部分が同時に折れる場合もあります。
骨粗鬆症と診断された方は特に気をつけてください